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第1回全国彫刻コンクール応募展
第1回全国彫刻コンクール応募展について

著者名:土方 定一


  野外の明るい光線の下に立っている彫刻の魅惑は忘れがたい。そこでは、彫刻のひろがり(あるいはフォルム)は明るい光線によってきざまれた明暗のなかで明るく笑うようであり、彫刻のもっている量塊(ボリューム)は大きな自然空間のなかではじめて息づく感がある。そして、ひろがりと量塊との関係に彫刻の造型はかかっているから、野外の明るい光線のなかで、彫刻は、はじめて生物のように活気にみちてくる。ヘンリー・モアが、彫刻はほんらい野外の芸術であって、太陽の光線が必要である......わたしの彫刻は、わたしの知っている一番うるわしい建物のなかより、どんな風景でもいいから、風景のなかに置かれてほしい、といっている理由のひとつは、こういうところにある。社会と接触する段階と同時に、これまでアトリエのなかでの実験的な作業に従っていた近代彫刻は、アンリー・ローランスがいっているように、アトリエから外にでて社会と接触する段階にはいっている。建築との協同ということがいわれ、また野外彫刻展が、ヨーロッパの各地で開催されている理由であろう。

  アントワープの4年目ごとに開催される野外彫刻展は歴史も古く、もっとも大規模なものであるが昨年は北イタリアのスポレットという人口10万くらいの美しい古都で、世界の現代彫刻の巨匠の作品のほとんどを集めた町ぐるみの野外彫刻展が開催され、ベネチアの国際美術展より意義があったと称賛されている。

  日本美術館企画協議会によって、宇部市の野外彫刻美術館の会場が第1回の開催地として選ばれたことは、この企画を一層、成功させることになった。この宇部市の野外彫刻美術館の会場は、前景は入江のような人工湖をひかえ、しばふのあるゆるやかな丘陵と森林をもつ4万平方メートルの会場で、現在のところ、これ以上の野外彫刻展の会場は日本の他の公園に求められないような自然的環境となっている。丘陵のうえに立つと、しばふのうえに置かれた彫刻は、人工湖とそのうえにひろがる青い空が背景となり、丘陵の下に立つと、彫刻は大きなシルエットのように天空にそびえている。

  第1回の「全国野外彫刻コンクール展」が現代日本の新人作家の膨大なエネルギーを反映したことは、関係者のすべての予想以上のものがあった。それは参加作家の数のうえからもいえるし、その質のよさ、新鮮さからもいうことができる。恐らく、参加作家は、この自然的環境のなかで、あらためて野外に置かれた彫刻の本質を反省し、彫刻のもつ自然的、精神的環境について反省せざるをえなかったにちがいない。現代彫刻の新しい実験と前進のための第一歩がここにはじまった、といっても誇張ではなかろう。

  すでに発表されたように今回の賞は八つの賞にわかれていて、大賞を志水晴児の「執念-い」宇部市賞を尾川宏の「生の起源」毎日彫刻奨励賞を富樫一の「王と王妃」がうけている。志水の石の組立彫刻が緊張した抽象形態のなかに、ひとつの人間心理を清潔に形づくっているとすれば、富樫のは四角な石柱を人間化しながら、ユーモアのある「王と王妃」の形態となっていて、よかった。尾川宏の鉄パイプをたばねた鉄彫刻は、上へと生成する人間意志をよくつたえているし、鎌倉近代美術館賞の島田忠恵の「長恨碑」は、単純だが、モニュメンタルな形のなかに悲劇的性格を帯びさせている。宇部市野外彫刻美術館賞の小田襄の「儀式」田中栄作の「ウベのみどり」は、装飾的な形のなかに、それぞれの歌をもっていて、この会場に絵画的な効果を与えている。宇部市長賞の土谷武の「門」は堅ろうな構成を示し、玉置正敏の「インヘルムに落ちるヘラクレス」は、ある幻想をうるわしく語っているようだ。

  第1回展にはこのほかに、木内克、柳原義達、辻晋堂、舟越保武、堀内正和、向井良吉、水井康雄、木村賢太郎などの作家が招待され、48点が飾られていて、これらの作品は、それぞれの性格的なふんいきをもって、この野外彫刻展を豊かに変化づけている。全体の配置は建築家、大高正人の幻想のなかに統一されている。

  毎日新聞社、日本美術館企画協義会主催のこの全国野外彫刻コンクール展はビエンナーレ(隔年)の形式で、今後も開催され、日本の新人作家を鼓舞するために開催されるが、将来は国際彫刻コンクールにまで発展させたい意図をもっている。宇部市における第1回全国彫刻コンクール展は現代日本の彫刻に新しい発展の可能性を力強く印象づけたことは特記していい。