6月7日 獣医さんのひみつ道具
(カテゴリ:獣医師の雑談) (投稿日:2025年06月07日)
みなさん、こんにちは。
6月に入り、暑い日が多くなってきましたね。帽子と水分補給を忘れずに!
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さて、今回の「獣医師の雑談」は道具がテーマです。
タイトルには"ひみつ道具"と記しましたが、国民的青い猫型ロボットとは全く関係ありません。
飼育動物のおもしろ写真を交えながら、獣医さんのひみつ道具について紹介します。
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おもしろ写真①眼科健診をするトクモンキー。ゴミでも入ってた?
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ひみつ道具の1つ目は採血セットです。
中身はこんな感じ。
いろんな太さの針、シリンジや採血管など動物から血を取るために必要な道具が入っています。
他に、軟膏類、カテーテルや割りばしなども入っています(あったら便利!)。
診察内容に合わせて、点滴や消毒液、爪切り、はさみ、ピンセット、、、
など詰め込めるだけ詰め込んで持って行くこともあります。
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2つ目は、皆さんもご存じの双眼鏡です。
双眼鏡と言えば、バードウォッチングやスポーツ観戦、アイドルのコンサートなんかで使っている人が多いイメージですよね。
動物園の獣医師の使用方法は一味違うかもしれません。
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広い展示場にいるボンネットモンキーや島にいるペリカンなどの観察に使うこともありますが、
最も多い使用理由は、"傷をさがすため"です。
動物園の動物たちは、寝室内であれば距離が近い(遠くても動物まで3mくらい)ので、
全体を観察するのはそれほど難しくありません。
しかし、「あの個体のほっぺに傷があります!」と飼育員さんが教えてくれても、
目視だけでは、血が出ていることくらいしかわからない、なんてことも。
傷を見ようと近づいても、大抵の動物は逃げていきます。
そのため、縫わないといけないような深い傷や消毒すべき汚い傷なのか判断できません。
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そんな時に、双眼鏡の出番です。
ちょっと離れて、拡大してしっかり診て、
手術の必要があるか、お薬だけで治るかなど治療方針を考えます。
とはいえ、高速で動く群れの中で1頭に的を絞ってじっくり観察するのは難しいのも事実です。
(私は、しばしば高速で動くサルたちを双眼鏡で見て目が回っています。)
双眼鏡でよく見えなくても、出血量が多かったり、傷が複数あったりする場合は捕まえてもらうことも多いのです。
どこに傷があって、どのくらいの深さなのか、、わかりますか?
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ひみつ道具の3つ目は、「ゲリベントール」です。
試験管+スプーンとスポイトが一体となったようなもの。
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なにに使うかというと、その名の通り"下痢便の採取"です。
ヘンテコなこの名前は、決して私が命名したものではありません!
正式な商品名です(特許も取られているらしい)。
これを使えば、直接便に触れなくてもべちゃっと広がった下痢便を採取することができます。
スプーン状になっているところが私のお気に入りポイントです。
(形のある便は取りにくいので、割りばしと紙コップの方が使いやすいよとの意見も。)
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採取した便は、顕微鏡で寄生虫がいないか、消化不良は起こしていないかなどを調べます。
問題があれば、駆虫薬や整腸剤などを処方します。
ヘンテコな名前の道具も診療においては重要なのです。
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ここまで、動物園の獣医師が使っている道具について紹介しました。
今回紹介できたのは、たった3つ。
本当は、もっとたくさんの道具や機械を駆使して業務を行っています。
時には、道具を自作することもあります。
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おもしろ写真②歩くコンテナ。なんの動物かわかるかな?
おもしろ写真③両耳検査中のシシオザル。左耳になにかあったかな?
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他の道具にも興味がある方は、園内を歩いている獣医師っぽい人に聞いてみてください。
何か、面白いものを持っているかもしれません。
どんぐり、くるみ、折れたヤギの角
ぜひ、緑が茂ってきた園内で元気に暮らす動物たちを見に来てくださいね。
担当:ゆあさ