8月7日 飼育員の考えごと。
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2025年08月07日)
皆さん、こんにちは。
ときわ動物園のブログで勝手にシリーズ化を狙う飼育員・坂口です。
ときわ動物園のホームページのお知らせでもご案内しましたが、今年はモモイロペリカンの雛の誕生と死亡の嬉しい出来事と悲しい出来事の両方がありました。
今回のブログでは、そのことをお話しようと思います。
2022年から、ペリカンの飼育に関わるようになりましたが、当時モモイロペリカンは♂しか飼育されていませんでした。
いつかペリカンの繁殖に挑戦してみたいなぁ・・・、その機会がくるかなぁ・・・っと思いながら過ごしていた頃、嬉しいニュースが!!
静岡県にある日本平動物園からモモイロペリカンの♀3羽が、ときわ動物園にやってくることになりました。
ペリカンの繁殖に取り組める!っと、楽しみな気持ちになったのをよく覚えています。
そして、やってきたモモイロペリカンの♀3羽
(左から、マイちゃん・チビちゃん・カンちゃん)
ときわ動物園にやってきたときは、まだ3羽とも1歳で幼さもありました。モモイロペリカンの性成熟は3~4歳といわれています。2~3年後、繁殖に取り組めるように今からしっかりと育てようと、飼育管理にあたりました。
2025年、モモイロペリカンの♀3羽たちが、3歳となり性成熟を迎える年になりました。
ペリカンたちが生活している「ペリカン島」で繁殖させるには、巣作りができるように巣材を提供する必要があります。(ペリカンは枯れ枝・枯草・落ち葉などを主な巣の材料にします。)
その巣材を準備している途中、
「そんなじゃ、全然足りんよ!ペリカンにはたくさんの巣材がいるんやけぇ!」
と、大ベテラン飼育員からのアドバイスもあり、巣材を求めて、ときわ公園・ときわ動物園内を走り回りました。
(集めた巣材!)
そして、集めた巣材をペリカン島へ運び繁殖に向け、準備を始めて3か月後の2025年の3月頃に嬉しい出来事が!?
ペリカン島にいるモモイロペリカンたちに繁殖期の兆候が見られ始め、
♂イマズ×♀カンちゃん、♂マズラ×♀マイちゃん、♂ソール×♀チビちゃん
の3組のペアができたのです!
そこからは、ペアで求愛→営巣(巣作り行動)→交尾を観察することができました。
(営巣中)
見守り続けること約1ヵ月、4月下旬に産卵がみられたのです!
代番者の飼育員Oさんから
「イマズ×カンちゃんペアの巣に卵があったよ!」
と知らせを受けたときは、「ヨシ!!」と喜びました。さらに続けて、他の2ペアにも産卵が確認できました。
(写真は♂ソール×♀チビちゃんの巣の中の卵)
そして、抱卵していた約30日間、モモイロペリカン3ペアは♂♀交代で雨の日も風の日もしっかりと卵を抱いていました。
夫婦で卵を守る姿は感動的でした。
そして、ついに5月20日に念願の雛がかえったのです。
飼育員Oさんから
「イマズ×カンちゃんペアの巣に雛がいた!!」
との知らせを受けたときは、
もう、ヨッシャーーーーーーー!!!!っと狂喜乱舞でした。
(なぜか、鳥の飼育担当チームで卵や雛の第一発見者は飼育員Oさんなことが多い・・・。ちょっとジェラシー・・・)
(母親カンちゃんと雛)
♀カンちゃんは、初めての子育てで大丈夫かな?っと心配でしたが、
父親イマズが子育て経験のあるベテランお父さんだったため、とても熱心に子育てをしてくれて、その様子をみた♀カンちゃんもぎこちなさが少しありましたが、一生懸命に雛の世話をしていました。
(母親カンちゃんと雛)
子育てする様子を観察するのはとても楽しく、時間を忘れてしまうほどでした。(そのときは、同じ飼育チームのみんなに大変ご迷惑をおかけしました。ごめんなさい(;^ω^))
日に日に、雛の肌の色がピンクから黒色に代わり始め、雛の成長も順調だと思い始めたときでした。
(父親イマズと雛)
孵化してから14日目に突然、雛が行方不明に・・・。
巣の中に隠れているだけかも!?っと観察を続けましたが、
その翌日、父親イマズと母親カンちゃんが、巣から離れていたのです。
その様子をみたときに
「あれだけしっかりと守っていた巣を放棄している・・・。やっぱり、雛はいないんだ・・・」っと感じ、
巣の放棄と雛の姿が確認できないことから、雛は死亡したと判断しました。
とても悔しくて、悲しかったです・・・。
その後、他の2ペア(♂ソール×♀チビちゃん ♂マズラ×♀マイちゃん)も孵化予定日が過ぎても変化が見られなかったため、
ペリカン島に上陸し、巣を調べたところ、卵の消失と腐敗した無精卵を確認しました。
(ペリカンの巣と腐敗してた卵)
腐敗した卵を回収したときも、とても残念な気持ちになり、なぜ?どうして?・・・そんな気持ちでいっぱいでした・・・。
けれども、悲しんでばかりはいられません。
今回の繁殖期の結果は残念なものとなってしまいましたが、
繁殖目的で導入したモモイロペリカン♀3羽がすべてペアとなり、営巣し、産卵・抱卵したこと。うち1ペアの卵は孵化して、約14日間子育てをしたこと。
これは繁殖成功に向けて大きな前進だと思います。
雛の死を無駄にしないように、情報収集をもっとして、対策を考え、
次の繁殖期に向けて準備しよう!そう強く思いました。
今回、私はペリカンの担当になってから初めてモモイロペリカンの
求愛行動→営巣→産卵→抱卵→雛・子育て
の様子を観察することができ、とても勉強になりました。
(体色が黒くなり、成長がみられ始めた雛)
そんな経験をさせてくれた3ペアのモモイロペリカンたちには、感謝の気持ちでいっぱいです。
その想いを胸に、繁殖成功をめざし、ペリカン飼育に取り組んでいきたいと思います。
飼育員の考えごとは続きます!
飼育担当 坂口